アゼルバイジャン認証制度
目次
1.概要
アゼルバイジャンは、現在のところ関税同盟に加盟しておらず、独自の認証制度を有している。認証に関する一般法にあたる法律は“標準化に関する法”(1996年4月16日No.60-Gアゼルバイジャン共和国法)であり、本法に従い、アゼルバイジャン共和国の国家規格の要求事項に適合しない又は、アゼルバイジャン共和国領土内で公式に認められた国際規格、地域規格、多国家間共通規格(CIS共通規格)又は外国の国家規格に適合せず、人の生命、健康、財産、自然環境にとって危険な製品(業務、サービス)の生産、輸入、販売、使用及び実施は認められないことになっています。
輸入製品の場合、製品が求められる規格の要求事項に適合しているかどうかを証明する「適合証明書」の提示義務が、“アゼルバイジャン共和国内での輸出入業務の規制規則の承認について”(1997年6月24日アゼルバイジャン共和国大統領令No.609)に定められています。
ユーラシア経済連合(関税同盟)の認証制度(以下、EAC認証)が導入される以前に加盟国の国内法で規定されていた認証制度に基づいて必要な証明書を取得し、流通している製品に対しては、新しい統一認証制度への移行期間が製品の複雑さや製造者への負担具合を考慮した日数で定められています。
このような取り扱いを受ける強制認証の対象となる製品のリストは、“製品(業務及びサービス)認証の段階的適用について”(1993年7月1日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.343)、 “火災安全の保障について”(1998年7月6日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.151)及び、“通信手段及び通信装置の認証規則について”(1998年8月21日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.175)によって定められています。
具体的な認証手続きについては、ロシア国内における制度と以下の点で似通っています。(ロシア国内の現行制度についてはこちら)
- 国家機関が認証機関を認定する(ただし、一部の認証業務は国家機関が直接行う)。
- 強制認証対象製品リストが承認されている。
- 強制認証対象の製品は、然るべき手続きで認定を受けた試験ラボにおいて行われる。
- 認証を受けた製品には、適合マークを授与する。
- ISO9001:2000の品質管理システム認証を推奨している。
- 認証を受けた製品、その製品の生産過程に対する監査がある。
- 認証スキームが設定されている。
- 提出書類、適合証明書はアゼルバイジャン語で作成される。(ただし、アゼルバイジャンにおいては、場合によっては外国語での対応も可能、としている)
- 強制認証対象製品を認証手続きを経ずに出荷した場合の、製造者や輸入者、販売者に対する法的責任が規定されている。
以下は、ロシアほど整備が進んでいない点、ロシアとは異なる点です。
- 強制認証対象製品を具体化する技術規則が採択されていない。
- 認証機関、試験ラボの数が少ない。
- 適合申告書、適合証明書の区別がない。
- 認証制度をハーモナイズさせるターゲット国としてCIS諸国のみならず、中近東、東欧を掲げている。
- 食品に関しては、国家機関が直接認証を行っている。
各製品に対する技術規則の制定は、アゼルバイジャン共和国法“技術規制について”が採択されてから、順を追って制定されると思われます。この辺の流れはロシアを例にしていると思ってよいでしょう。
また、食品、動植物の検疫関連の規制に関しては、1997年6月24日アゼルバイジャン共和国大統領令No.609 “アゼルバイジャン共和国内での輸出入業務の規制規則の承認について”に従い、輸入される製品の特性に応じて、税関に獣医証明、植物検疫証明、衛生証明の提示が求められます。
2008年11月11日アゼルバイジャン共和国大統領令No.12に従い、商品や輸送機器によるアゼルバイジャン国境横断管理の際に、“ワンストップ窓口”の原則が導入されました。この機能は、アゼルバイジャン共和国の税関委員会に負わされています。
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2.強制認証対象製品
<強制適合確認の対象となる商品のリスト>
1993年7月1日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.343によって承認されたリストで、ここには122品目が強制認証としてあげられています(食品、農産物、玩具、子供服、家電製品、無線・テレビ放送受信機、石油・天然ガス採掘用設備など)。
<火災安全分野で強制認証の対象となる商品、サービスのリスト>
1998年7月6日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.151によって承認されたリストで、ここには9品目が含まれています。
- 消防車両
- 消防用設備
- 消防・救命用装備(救命はしご、救命ロープや救護マットなど)
- 消防士の個人用保護具
- 消火機器(手動、自動、初期消火、本格的な消火用のものなど)
- 消火器(携帯用、可搬型)
- 火災警報器
- 消火用手段(発泡剤、消火剤など)
- 物質、材料及び製品(床材や建築資材、電気機器、ガス機器など)
<一般用通信網の分野での認証の対象となる電子通信手段及び設備>
1998年8月21日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.175によって承認されたリストで、ここには7品目が含まれています。
- 通信システム機能を実現する通信手段及び設備
- デジタルメディア機能を実現する通信手段及び設備
- 管理やモニタリング機能を実現する通信手段及び設備
- 一般用通信網で提供されたサービスの容量を登録(記録)ために使用される通信機器
- 無線電子通信手段及び設備
- 通信技術や通信設備使用時に影響を与えるソフトウェア(機動的探索オペレーションを実現するものを含む)
- 一般通信網の端末ケーブル機器及び端末通信機器、通信ケーブル、ワイヤー、電源供給機器
3.認証手続き
実際の認証手続きは、以下の手順を踏んで行われます。
- 強制認証対象にあてはまるかを確認。
- あてはまった場合、その認証手続きについて、認定認証機関に問い合わせを行う。
- 認証機関に必要書類を提出する。
- 認定試験ラボで試験を行い、テストレポートを作成。
- 試験結果が良好であれば、適合証明書が発行され、製品に適合マークを付与する。
- 認証を受けた製品、その生産プロセスに対する監査が適宜実施される。(監査要否、その方法等は認証スキームによる)
提出書類には次のようなものがあります。
- 認証を受ける製品の技術特性、パラメータ及びその他のインジケーターを規定している有効な規制文書(国内規格、業界規格、仕様書、国際規格、国家間規格など)
- 製品のテスト方法、テスト指令書、テストレポートなど
- 生産環境の安定性を証明するような技術文書や設計文書など
- 製造者(供給者)による認証指示書
- 品質管理を保証するための生産過程の設計文書(認証スキームによって要求される)
4.義務的要求事項
1996年4月16日No.60-Gアゼルバイジャン共和国法“標準化について”第6条に従い、アゼルバイジャン共和国の国家規格は、義務的要求事項及び奨励要求事項を規定している。義務的要求事項に属するのは次のようなものです。
- 人の生命、健康、財産及び自然環境に対する製品(業務、サービス)の安全性に関するもの
- 製品(業務、サービス)の技術的、技能的、情報的適合性とその互換性に関するもの
- 製品(業務、サービス)の基本的な消費者特性、それらの管理方法に関するもの
- 製品のパッケージ、マーキング、輸送、保管、廃棄規則に関するもの
- 製品(業務、サービス)の安全機器の要求事項及び生産衛生設備に関するもの
- 生産の全段階においての資源の有効利用規則に関するもの
- 製品の使用規則、業務実施、サービス提供規則に関するもの
- 製品(業務、サービス)の技術文書に関する規則に関するもの
その他の個別要求事項は、各国家規格によって定められています。
アゼルバイジャン共和国の国家規格の要求事項又はアゼルバイジャン共和国領土内で公式に認められた国際規格、地域規格、国家間規格又は他国の規格に適合していない製品の製造、輸入、販売、使用(業務、サービスの実施)は認められません。
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5.製造者(販売者)の認証義務違反に対する責任
“製品(業務及びサービス)認証の段階的適用について”(1993年7月1日アゼルバイジャン共和国内閣決議No.343)には、以下の場合、製造者(販売者)は責任を負う、とされています。
- 強制認証対象の製品(業務、サービス)を、証明書を取得せずに販売した場合
- 証明書に記載されている規制文書の要求事項に適合していない製品(業務、サービス)を販売した場合
- 販売停止や販売禁止処分がされている製品の販売をした場合
- 認証を受けていない、もしくは、証明書の有効期限が切れた又は停止された、もしくは、有効期限が切れた又は証明書が無効になったものを含み、発行された証明書の要求事項に適語していない製品(業務、サービス)に適合マークを付与した場合
- 製品(業務、サービス)の安全機器の要求事項及び生産衛生設備に関するもの
- 生産の全段階においての資源の有効利用規則に関するもの
- 製品の使用規則、業務実施、サービス提供規則に関するもの
- 製品(業務、サービス)の技術文書に関する規則に関するもの
上記に該当した場合、行政罰の対象となり、罰金等が課せられる。また、認証機関や国家監督機関の裁量で適合証明書の効力の停止や無効処分もありえます。
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6.アゼルバイジャン認証制度の今後の方向性、現在の問題点
アゼルバイジャン当局は国際協調の流れにのって、各国の認証担当省庁、委員会、国際機関との協調をうたっており、独自路線に走ることはないと思われます。
しかし、まだ発展途中の制度のため、強制認証リストはかなり抽象的で、実際の認証業務を行う場合に、適宜認証機関に問い合わせる必要があり、認定を受けている認証機関の数が少ないこともあり、認証業務サービス面での融通性、独占による強権性などが懸念されます。
国際規格や他国家規格を相互承認する動きはロシアよりも活発であり、自国認証や欧州認証が認められるケースもある。また、ロシアの認証機関がアゼルバイジャンの認証機関と業務提携をして認証サービスを提供している場合もあるので、すでにロシアに出荷している製品である場合、このような認証機関を使うと認証取得がスムーズになる可能性もあります。特に、ロシアで認証を受けた製品に対して、CIS諸国共通規格がすでに採択されている場合、アゼルバイジャンでも同様の仕様で出荷できる可能性が高です。
ご意見、ご感想、ご質問等ございましたら、筆者(サイト管理人)までご連絡ください。
<お断り> 本稿執筆にあたり、アゼルバイジャン当局のサイトの英語記載ページ(時にアゼルバイジャン語の機械翻訳を使用)やロシア語で書かれた公式文書を参考にしております。記載内容は、多方面からの情報を総合的に精査しておりますので、十分信頼いただける内容にはなっておりますが、アゼルバイジャンでの公用語はアゼルバイジャン語であり、筆者は当言語を解しませんので、一部誤訳や誤認等ございましても責任は負いかねますのでご了承ください。
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参考資料
- Decision no. 343, dated July 1, 1993 of the Cabinet of Ministers of the Republic of Azerbaijan
- Decision no. 151, dated July 6, 1998 of the Cabinet of Ministers of the Republic of Azerbaijan
- Decision no. 142, dated September 25, 2007 of the Republic of Azerbaijan
- Decision no. 175, dated August 21, 1998 of the Cabinet of Ministers of the Republic of Azerbaijan
- Law dated April 16, 1996 of the Republic of Azerbaijan on standardization
- Law dated September, 1995 of the Republic of Azerbaijan on consumer rights protection
- Law dated November 18, 1999 of the Republic of Azerbaijan on foodstuff
- Решение Экономического совета Содружества Независимых Государств "О ходе работы по поэтапной отмене ограничений во взаимной торговле государств-участников СНГ"
- http://www.azstand.gov.az/