医療製品(医療機器)認証制度(ロシア国内)
目次
1.概要
ここでは、医療製品製造者がロシア連邦に医療製品を出荷するにあたって、どのような手続きを踏まなければならないかを説明します。
まず、「医療製品」の定義ですが、医療製品の流通を規制する一般法「国民健康保険基本法」の第38条第1項で次のように規定されています。
「個別に又は他と結合して、並びに用途に沿った適用をするために不可欠な他の付属品とともに医療目的で適用されるあらゆる用具、器具、機器、設備、材料及びその他製品で、ソフトウェアを含み、生産者(製造者)によって、病気の予防、診断、治療及びリハビリテーション、人体器官の状態のモニタリング、医学的調査の実施、解剖学的構造又組織の生理機能の回復、取替、変更、妊娠の予防又は中断はのためであると指定されており、その機能的用途が、人体器官に薬理学、免疫学、遺伝的、代謝物質的作用を起こすことによって実現されないもの」
ロシアで流通する医療製品はすべて、然るべき手順で国家登録を経なければなりません。医療製品の国家登録は、2012年12月27日ロシア連邦政府命令No.1416によって承認された医療製品国家登録規則に従って、ロシア保健監督庁(Roszdravnadzor、以下RZN)によって行われます。申請者は申請書類を用意して、当局に直接赴く必要があります。
医療製品の国家登録の前段階として、まずは、自社の医療製品が潜在的適用リスクのどのクラスに分類されるのかを確認します。医療製品のクラス分け方法はCIS国家共通規格GOST 31508-2012 に記載されています。なお、この規格は欧州の医療機器指令医療機器指令(93/42/EEC)付属書9に準拠しています。
さらに、注意しなければならないのは、国家規制対象の計測機器に該当する医療製品は、医療製品の国家登録手続きの前に、型式承認手続きを経ていなければならないので、規制対象の計測機器に該当するかどうかも確認する必要があります。型式承認手続きは時間がかかりますので、該当する場合、出荷時期と合わせてよく検討する必要があります。国家規制対象の計測機器に該当する医療製品のリストは2012年8月15日ロシア連邦保健省令No.89の付属書2に記載されています。
医療製品が安全かつ有効であることを証明ために遵守する必要がある具体的な義務的要求事項は、法令の形では定められていませんので、医療製品をロシア国内で適用されている国家規格やCIS国家共通規格に適合させる形で証明します。医療製品に関する規格は、欧州の医療機器指令(93/42/EEC)に準拠しているので、すでにCEマーキングを取得している製品などは原則として特に仕様変更をする必要なくロシア国内に向けて出荷できることになります。(実際の手続きでは、自社使用規格がロシアでも認められるかを前もって確認してください)
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2.国家登録手続き
医療製品の国家登録手続きは、以下の5つのステップに分けられます。
- 事前準備(技術試験と毒性試験の実施)
- 申請書と添付書類の提出
- 鑑定(第1段階)
- 臨床試験
- 鑑定(第2段階)
- 医療製品登録決定及び登録証明の発行
ロシア保健監督庁の窓口で直接行うことになりますが、実運用としては専門の代理店(認証機関)が書類の作成、申請書類提出の代行を請け負うことがほとんどです。
代理店を介して申請をするもう1つの理由のとして、国家登録の申請者資格は「医療製品の開発者、製造者、製造者の全権代理人」となっており、申請者はロシア国内の居住者(法人の場合ロシア国内で登記された法人)である必要があります。現地法人をもたない外国の医療製品メーカーは、代理店に「製造者の全権代理人」として申請をしてもらうのです。
医療製品の認証は膨大な量の書類の準備から始めて実際に登録証明を手にするまで少なくとも半年はかかり、試験費用なども合わせるとコスト面でも大変な認証です。代理店を探す場合は本当に信頼できる代理店かどうかをしっかり見極めたうえで着手してください。弊所でも医療製品国家登録の代理店紹介、並びに書類作成のお手伝いをしておりますので、ご希望の方はご連絡ください。
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3.事前準備、申請書と添付書類の提出
医療製品の国家登録のために、決まった様式の申請書に必要事項を記載し、添付書類と合わせてRZNに提出します。添付書類は次のようなものになります。
- 生産者(製造者)の全権代理人の権限を証明する文書のコピー
- 医療製品に対する基準文書(規格等)に関する情報
- 医療製品に対する生産者(製造者)の技術関係書類
- 医療製品に対する生産者(製造者)の取扱説明書。医療製品の適用指示書または使用指示書を含む。
- 医療製品とその医療製品の用途に沿った適用のために不可欠な付属品の全体像が分かる写真(寸法は18×24センチメートル以上)
- 医療製品の技術試験結果を証明する文書
- その使用に人体組織との接触が予期される医療製品の毒性試験結果を証明する文書
- (ロシア連邦保健省によって承認される測定値統一性確保の国家規制の分野での計測機器に属する医療製品に関しては)計測機器の型式承認のための試験の結果を証明する文書
- 文書の目録
- 医療製品の臨床効果および安全性を証明するデータ(ある場合)
- 医療製品の臨床試験の計画案とその裏付け資料(ある場合)
ここで見てわかるように、6.と7.の文書を用意するために、国家登録の前に医療製品の国家登録のための技術試験、毒性試験を行うことができる試験機関で前もって試験をしておく必要があります。当該機関はロシア連邦内にありますので試験サンプルを国内に持ち込む必要があります。元来医療製品を通関するときに、医療製品の登録証明の提出が求められますが、登録証明を取得するための試験のための持ち込みなので、当然このタイミングでは登録証明はありません。そのため、医療製品の登録のための医療製品の持ち込み手順(ロシア連邦保健省令2012年6月15日No.7n)が定められています。
また、書類はすべてロシア語で作成されなければならず、取扱説明書などは翻訳証明をつけてロシア語に翻訳される必要があります。
RZNは申請書類を受け取ってから5営業日のうちに内容のチェックをし、不備があるかどうかを確認します。不備があった場合、申請者に30日以内に是正するように通知が行きます。30日以内に是正されない場合は国家登録申請は却下されます。
不備がないことが確認された日または是正された日から3営業日以内にRZNは国家登録開始の決定をします。この決定の日から実際に登録証明が発行されるまで(または登録申請が棄却されるまで)、50営業日を超えてはいけない、と法律で定められているので、登録決定の日にちはしっかりと確認します。ただし、臨床試験実施期間は50営業日にはカウントされません。
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4.鑑定(第1段階)
登録業務と鑑定業務はそれぞれ別の機関が行います。登録業務を行うRZNは、国家登録開始決定の日から3営業日以内に、鑑定機関に鑑定依頼をします。
依頼の日から20営業日以内に、鑑定機関は申請書類の分析評価を行い、臨床試験を行ってもよいかどうかの判断を記載した鑑定書を作成し、RZNに提出します。また、分析過程で追加情報が必要だと判断した場合、RZN経由で申請者に追加情報の提出を要求します(鑑定機関が直接申請者とコンタクトをとることはありません)。
RZNは鑑定書を受け取ってから5営業日以内に、鑑定書の評価をし、申請者に臨床試験実施許可証を発行します。鑑定機関が臨床試験を実施するのは危険である判断した場合、この時点で国家登録申請が棄却されます。
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5.臨床試験
臨床試験実施許可証が発行されたら、申請者は臨床試験実施許可を受けている任意の試験施設(病院等)で臨床試験を行います。申請者は、臨床試験を開始してから5営業日以内に臨床試験が開始されたことをRZNに通知しなければなりません。
試験が終了したら試験結果をRZNに提出すると同時に、試験の結果すでに提出した書類のデータに変更が生じた場合は、書類の訂正を行います。
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6.鑑定(第2段階)
RZNは、申請者から臨床試験の結果を受け取った日から2営業日以内に国家登録手続き再開決定をし、その後2営業日以内に鑑定機関に臨床試験の結果を送付します。
鑑定機関は10営業日かけて臨床試験の結果を鑑定し、鑑定書を作成し、RZNに送付します。
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7.国家登録の決定
RZNは、鑑定書を受け取った日から10営業日以内に、鑑定機関が作成した鑑定書の評価を行い、医療製品国家登録決定(または棄却決定)をし、登録証明(または棄却通知)を作成し申請者に発行します。
発行された登録証明に期限はありません。
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8.GOST適合申告書の作成
無事に国家登録手続きが完了したら、出荷までにもう1つ必要な手続きがあります。医療製品は、2009年12月1日ロシア連邦政府命令No.982「適合証明書および適合申告書の取得が義務である製品のリスト」の中の「適合申告書」の項目に含まれているため、通関までにGOSTの適合申告書を作成する必要があります。すでに国家登録によって安全性は確認されているので、適合申告書の作成自体はさほど大変ではありません。認証機関によっては即日対応も可能です。忘れずに作成しましょう。申告書作成後に適合マークを医療製品本体、パッケージ、取扱説明書に貼り付ける必要もあります。
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9.新制度への移行
ロシア連邦が加盟しているユーラシア経済連合内で、医療製品の円滑な流通と品質の確保をする目的で医療製品の流通を規制する統一規則が採択されて、2017年5月6日に関連法令のほとんどが施行されました。ユーラシア経済連合内での共通制度で、移行期間は2021年12月31日までとされています。それまでには新制度に基づいた認証手続きを経る必要がありますが、連合加盟国でも元々の国内制度に差があり、このスケジュールではタイトではないか、という予測がされています。しかし、いずれにせよ移行することは決定されているので、早めの新制度対応が肝要です。弊所HPでは、新規制の情報を随時アップしていきます。
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参考資料
- ПОСТОНОВЛЕНИЕ от 27 декабря 2012 г. N 1416 ОБ УТВЕРЖДЕНИИ ПРАВИЛА ГОСУДАРСТВЕННОЙ РЕГИСТРАЦИИ МЕДИЦИНСКИХ ИЗДЕЛИЙ
- Федеральный закон «Об основах охраны здоровья граждан в Российской Федерации» от 21 ноября 2011 года №323-ФЗ
- МИНИСТЕРСТВО ЗДРАВООХРАНЕНИЯ РОССИЙСКОЙ ФЕДЕРАЦИИ ПРИКАЗ от 15 августа 2012 г. N 89н "Об утверждении порядка проведения испытаний в целях утверждения типа средств измерений,а также перечня медицинских изделий,относящихся к средствам измерений в сфере государственного регулирования обеспечения единства измерений, в отношении которых проводятся испфтания в целях утверждения типа средств измерений"
- Постановление Правительства РФ от 01.12.2009 N 982 (ред. от 20.10.2014) "Об утверждении единого перечня продукции, подлежащей обязательной сертификации, и единого перечня продукции, подтверждение соответствия, которой осуществляется в форме принятия декларации о соответствии"